市町村合併が問いかけるもの〜栃木県高根沢町を事例として〜(2004/10/25発表レジュメ)

                             国際社会学科4年 坪井知子

高根沢町の現在

 現在まで5回の宇都宮市・高根沢町合併協議会が開催されているが、10月14日高橋克法高根沢町長が協議会休止を申し入れ、宇都宮市高根沢町合併協議会は凍結された。協議会は残すが、事実上、宇都宮市との合併は白紙に戻った。同町が協議会休止という決断にいたった理由としては、現時点において行政側が十分な説明責任をまだ果たせていないこと、議会の理解を得られていない状況にあること、 特に同町においては、住民投票等により町民の考え方が大きく二分されてきた経緯があり、合併に関してはより十分な説明責任を果たし、十分に議論し、町民の納得と合意を得たうえでの合併の必要性があることをあげ、さらに宇都宮市と合併を進める住民の会から合併を見直すべきとの主旨の要望書が10月6日に町長宛に出されたことも同町ホームページで明らかにしている。

宇都宮市との合併協議会をいったん打ち切ることを決断した同町は、今後も協議会は残すとしているが、今後の開催予定は期限なしの未定状態である。同町は、現行の合併特例法の適用期限内での合併はあきらめ、2005年4月から適用される合併新法の下での合併を目指す考えを示している。今後はこれまで町が行ってきた合併に対する町民の合意形成が不十分であったという反省を踏まえ、2005年4月を目標に、行政、町議会議員、有識者、公募委員等、幅広い住民参加による、(仮)合併検討委員会の立ち上げを検討しているという。そして、その組織において、合併新法のもとでのメリット・デメリットを研究するとともに、すでに合併した他市町村の事例も参考にしながら多方面にわたる議論を積み上げ、その内容を町民に発信することによって全町的な議論を深めたいとしている。
(参考)

●宇都宮市との合併を進める住民の会から町長に提出された要望書一部 *高根沢町HPより抜粋

「(私たちの)基本理念は、町民が納得する合併、町民が心の底から望む合併を実現することにあり、行政が一定のスケジュール管理に基づいて、町民の充分な理解が得られる前に無理やり合併をすることには反対です。(中略)町民の真の理解を求める上で必要とされる期間を考慮した中で、現行の合併スケジュールの上に影響があるならば、従来のスケジュールに翻弄されることなく新たなスケジュールを構築し、時間はかかるとしても隅々に渡る説明会を実施し民意を尽くした合併を是非とも進めるべきです。」

 

宇都宮地域合併協議会の現在

現在まで7回協議会が開催されてきたが、924日第7回合併協議会で上三川町の協議会脱退が承認された。同町は、8月中旬の住民アンケートで合併反対が約3分の2を占めたことを受け、9月の定例議会に離脱に関する議案を追加提出していた。 

上三川町が協議会からの離脱を表明したこと、残る3市町も議員定数をめぐり合意にいたらないこと、また協議会の会長である福田富一宇都宮市長の知事選挙の出馬など、宇都宮地域合併協議会も難航を極めている。協議会についても今後の開催は未定であり、先行きは見えない。破談の可能性も懸念される。

全国でも、新市の名称や編入か新設合併かなどで協議の折り合いがつかず合併が破談になるケースが多々報告されているが、宇都宮地域もその一つになるという可能性は否定できない。例え合併協議が進んだとして、とりわけ20053月という現行合併特例法の適用を念頭に期限付きで合併に必要な合併スケジュール(都道府県に申請)までをこなすのは不可能に思える。例え期限に間に合ったとしても、議論の不十分さ、結論の性急さ、計画性の乏しさは隠しきれないだろうし、マイナスな結果を招くのではないか。

 

◎総務省HPの合併相談コーナーのページでこんなページを見つけた。市町村合併の協議が破談し、協議会が解散・休止した後、別の枠組みで協議会を再開した「合併協議における再出発事例」についてのものである。岩手県や宮城県を始め、香川県、熊本県にいたるまで、全国の13の事例を報告している。一度破談になった協議会が再出発にまでいたった経緯などが示されている。(あきらめずに合併進めろってことなんだろうなと思った・・・)

 

宇都宮市・高根沢町合併協議会の休止をうけて

 高根沢町が住民投票の結果を受け、4月宇都宮市との間に合併協議会を設けてから約6ヶ月が過ぎた。その間、芳賀町との合併協議会廃止を経て、宇都宮地域側の受け入れ問題や町議会の問題など紆余曲折もあるが、合併に向けて協議を重ねてきた。今回、合併協議会が休止になったことを受け、自分自身の中で納得できる部分もあるというのが正直な気持ちだ。住民投票結果に併せ宇都宮市との間に合併協議会が設けられたこと、それに伴い芳賀町との合併協議会が廃止になったことについて、自分自身、一時は方向性が1つにしぼられたことで前向きな意見を持っていた。が、改めて考えると投票結果は僅差(賛成7410票反対7195票)であり、宇都宮市との合併に対する町民の合意が十分に得られたとは言い難い状況であった。その状況の中で合併協議は始まり進められたわけだが、町議会や町民を含め町全体として宇都宮市との合併に対する意識がついていけなかったように感じる。

一度、宇都宮市・高根沢町合併協議会(第2回6月22日開催)を傍聴したことがあるが、その時も出席していた高根沢町長と町議会委員の間でさえ意識の食い違いがみられた(住民投票後の時点で町議会は芳賀町との合併に積極的であった)。

今回の決断は、そういった合併に対する町の状況への不安や危機感が高まった結果だと考える。逆に捉えれば、住民の合併に対する意識の高まりであるとも考えることもできるだろう。

今回の合併協議会の休止を受け、よく言われることだが、改めて住民の行政参加の必要性を痛感した。協議会設置前、もっと以前にこういう動きが起こっていたら、このような経緯をたどることはなかったかもしれない。住民の合意形成は不可欠であり、今後は住民を巻き込んだ議論がなされること、そのために住民に自分の町の合併対して積極的に関心を持ってもらえるような機会をつくること、そしてその上で結論が出されることが期待される。そういう意味でも、今後の町の取り組みや、町が組織化を検討している(仮)合併検討委員会には大きな関心が持たれる。

 

町がくだしたこの挑戦を応援したいと思った。

 

 

<参考資料>

下野新聞

宇都宮市・高根沢町合併協議会HP http://www.u-t-gappei.jp/

総務省HP 合併相談コーナー http://www.soumu.go.jp/gapei/gapei.html

高根沢町役場HP http://www.town.takanezawa.tochigi.jp/